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余日録


by watari41

天地明察

 息子が正月みやげに持ってきた本の中に時代小説「天地明察」があった。著者は「沖方丁(うぶかたとう」、発行所は角川書店、初版発行はH21年11月30日である。興味深々たる内容なのである。大好きな歴史・天文・算術(和算)・暦・囲碁の話なのである。
 時は、江戸中期にさし掛かる寛文年間なので1700年の少し前だ。仙台では伊達騒動が起きている頃である。主人公は「安井算哲(2代目)」で、江戸時代における囲碁四家のひとつである。安井算哲は別名を「渋川春海」とも称した。
 彼の偉業は、それまで800年間も使われてきた暦を、いろんな挫折を乗り越えて天文測定と巧みな算術、そして朝廷や保守的な公家、幕府を巻き込んで「改暦」したことである。陰には彼の人間的成長があった。その物語なのだ。
 日本の暦は中国の「唐」の時代にできた「宣明暦」というものを使っていた。一年を365.2446日としている。これは今の基準から言うと0.0024日長いのである。これを800年も使い続けていると2日ほどのづれが出てしまう。日蝕や月食の計算日と実際とに差異が生じていたのだという。
 改暦の権限は、朝廷にあって、幕府にはなかった。京都の陰陽師という公家が担当することになっていたのである。しかし長い年月を経て、計算根拠は秘事とされてきたが、実際には失われてしまっていたのだという。
 当初、渋川春海は「唐」から数百年後にできた「元」の時代の「授時暦」が正確なので、それを使うべきとしたが、中国北京と江戸・京都とのわずかな緯度の差異から誤差のあることがわかり、独自の大和暦というものを作り上げたのである。
 
 彼と同年に和算の元祖と言われた「関孝和」がいる。その算術が大いに役立ったのである。また暦とは直接の関連はないのだが、同時代に囲碁の天才といわれた本因坊道策がいて対等に上覧囲碁をやっていたのである。彼が暦の道に進むのを大いに悔しがったのである。(囲碁の話は省略)

 歴史書には、わずかに一行しか春海は登場していないのだそうだ。「安井は改暦を命じられ、関孝和の算術とも相まって事をなしとげた」

 作者の沖方さんは96年の学生の時に、ある賞を受けているそうで、時代小説はこれが初めてだとか。大変な才能の人がいるものだ。
 
Commented by クオリア at 2010-01-22 09:49 x
改暦に挑みながら最大の挫折を味わうまでの息もつかせぬ筆致だと解説されていましたがwatari41さん息子さんから良書をプレゼントされましたね
歴代の天才は努力して目的達成していることに感動をおぼえます。
Commented by watari41 at 2010-01-22 14:09
 500頁に近い大冊ですが、次々にページをめくらされます。昔の人の努力の様は、現代人の想像を絶するものがあります。また、面白さも兼ね備えており良い本を読みました。クオリアさんコメントをありがとうございます。
Commented by moai at 2010-01-24 10:11 x
息子さんが親父の興味のある本を土産に帰ってくるとは、なんともうらやましい親子関係です。自然科学者を描いた時代小説、本因坊棋士が出てくるというので早速アマゾンで注文しました。グータラモアイに読み切れるか自信がありませんが、watariさんのあとを追ってみます。
Commented by watari41 at 2010-01-24 17:01
 ゲーム世代の作者なんですね。本を持参した末っ子とは同年のようで現代人もまた、いろんな方面に興味を持っていることを認識した次第。
 第一着手を天元にというのは、安井算哲が最初だったんでしょうかね、依田9段が、いつかの正月囲碁でそれを目にして驚いたことがありました。moaiさんコメントをありがとうございました。
by watari41 | 2010-01-21 21:01 | Comments(4)