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余日録


by watari41

東京の思い出(1)

 荻窪に住んでいたことがある。昭和55年から3年間ほどだった。会社の宿舎はオンボロだったがすこぶる環境のいいところである。近くには音楽評論家大田黒元雄さんの大きな屋敷があって、死後に東京都に寄付されて立派な公園となり無料開放された。第二次大戦の舞台の一つでもあった近衛文麿の荻外荘もある。緑の多いところだった。近くを散歩すると大きな木には札がついており、杉並区指定のNOがついていた。
 井伏鱒二の「荻窪風土記」などもあるが、風情豊かなところでもある。
 そこから青山にある東京事務所に通勤した。地下鉄だと会社のすぐ前に出るのだが、地上の電車を選んで信濃町で下りて歩いた。途中で神宮外苑の森の中を通り10分ほどで青山通りにでた。東京で土の上を歩けるのはすばらしいことだと近くの大商社に勤務する人が言っていたものである。
 会社から見下ろすと、広大な青山墓地公園が目の前にある。昼休みには明治の元勲の大きな墓石を見ながら散歩したものである。有名人も多く住んでいたようだ。ある時、近くのそば屋で昼食していたところ、同僚の男が前に座った人に、あなたは俳優ではないのかと尋ねた。そうですという。さらに名前を聞いたのである。失礼なことではある。その人はWですといった。その頃にはもうかなり名前の売れていた俳優であった。テレビドラマでもよく見るが、最近は競馬のハルウララを扱ったものに主演すると決まったという記事を読んだ。
 東京でのことは、会社生活での楽しい一コマだった。
by watari41 | 2004-09-02 11:53 | Comments(0)