天地人

 今年の流行語にはならなかったが「義」という文字が大河ドラマを駆け巡った。上杉謙信に発して景勝・直江兼続と受け継がれた。日本人の我々はこの文字に一種の憧れを持っている。鼠小僧という義賊をも作りあげた。

 「義」の反対語は「利」である。義は善、利は悪のようなイメージを抱きやすいが、必ずしもそうではない。資本主義に利は必要であり、その蓄積の「富」は、産業革命を生んで人類に限りない利便を与えた。しかし不健全なる「利」の追求は、ろくなことにならないことは現代社会で多くのことを学んでいる。

 「義」も時にはおかしなことになってしまうことがある。数年前、いや現在も横行しているようだが、偽りのブランドというのが存在する。牛肉の冷凍品を預かっていた倉庫会社が、大手メーカーの雪印が頻繁に輸入肉を国産品とラベル変更しているのをみて、「正義」を発揮してこれを訴えた。しかし、これがとんでもないことになってしまった。食品会社が潰れたのはまだしも、当の倉庫会社の客先がすべて逃げ出したのだ。自分達も不正行為をやらざるを得ない時に、あの倉庫ではまずいということからである。ついに冷凍倉庫会社の人達は路頭に迷った。そんなドキュメンタリー番組を見たことがあった。

 我々も自慢ではないが、在職中、あるいは個人的にいくつもの不正行為を意識的に或いはやむを得ず行っている。自分自身で見て見ぬふりをしていることにしている。そうしないと生きていけない場合だってあるのだ。しかし心の中では自責の念にさいなまれている。大多数の日本人はそんなことなのだろうと思っている。キリスト教の人達は懺悔する機会があるからいくらかはよいのだろうかと思ったりしている。

 「義」を貫き通すことなどはできそうもない。しょせん我々は義と利の間で生きているのであろう。まさに天と地の間に人間がいるのだ。

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Commented by クオリア at 2009-12-27 17:57 x
戦時中は食糧危機でした。闇米が横行しました。法律で禁じられている行為です。法を守りとおした裁判官が餓死してしまいました。配給米だけでは生きていけなかった時代。 不法行為は見つからないように実行するしかないそして生きて行くしかない。現代も国家の首相はじめとして裏金をつくる。なにを信用してよいのか判らないのが人間の住む社会なのですね。とかくこの世は住みにくい・・・ですね
Commented by michiko at 2009-12-28 03:16 x
輸入食品も国産と偽るから消費者を騙すことになるのですよね。
輸入食品も業者が職業持続可能なだけの利益で生産国の表示を正確にすれば 我々も納得できるのです。
冷凍倉庫業者が倒産・・・、どの業者も同じ偽装をしているのですか??
Commented by moai at 2009-12-28 08:53 x
総理大臣が友愛という言葉を掲げるとやや滑稽に感じるほどに世の中、義を語ることが少なくなっていますね。昔は少年剣豪マンガや親が聞き入る浪花節で子供の心の中に正義感が形成されていたように思うのですが、その後社会人になって語るのは”利”の話ばかりだったと思います。
人間自然体で義の心ははぐくまれません。そう考えると親、社会の責任は重大なものがありますね。
Commented by schmidt at 2009-12-28 11:08 x
 「義」を英語にすると「Righteousness」となるようです。西欧の「正義」「公正」は哲学や宗教が絡んでくるので、手にあまります。

 われわれの「義」はなんとなく簡潔です。「弱い者いじめをするな」「やましいこと考えるんじゃねえ」「困っている人を見捨てられるか」「そんなことじゃあ、おてんとさまの下を歩けないだろう」・・。
Commented by watari41 at 2009-12-28 11:30 x
 最近の地元紙では、岩手県の建設業界苦境が談合の廃止によるところが大きいと言うような見方の記事がありますが、自由競争にすると、行きつくところまで、価格が下がってしまうんですね。法を守るとはどういうことなのか根本に遡って考えてみる必要がありそうですね。クオリアさんコメントをありがとうございました。

moai さん、浪花節や浄瑠璃は勧善懲悪が決まりでしたが、最近のものは必ずしもそうではないですね。巨万の富を得たものが勝ちみたいな風潮もありますね。アメリカでは30代でそんな富を得て引退して悠々自適が理想だとか、そんな番組がありましたが、前の経済大臣がそんな風潮を一層助長した感がありました。大学教授となって、またそんなことを教えているんでしょうかね。コメントをありがとうございます。

michiko さん、仙台の大手精肉業者石川屋も輸入牛を国産として見つかり、潰れました。学校給食に使うものだったのでどうしようもなかったですね。日本の業界というのは、どこも似たり寄ったりがあるんです。コメントをありがとうございます。
by watari41 | 2009-12-26 20:15 | Comments(5)