悪い円高

 著名なエコノミストであるリチャード・クーさんが「良い円高・悪い円高」という著作を出して当時話題になったものだ。現在進行中の円高は「悪い円高」の代表的なものであろう。身を削って(給料を下げて)まで、製品の価格を下げている。根本原因は国内で物が売れないことにある。価格をさげざるを得なくなる。そうすることで見かけ上は、益々国際競争力が高まり円は強くなる。「良い円高」とは、生産性が高まり、その結果コストが下がることだったはずだ。

 我々が入社の頃は、まだ360円の時代だった。外国から優れた機械を購入するのに、その為替レートに何らの違和感も持たなかったことを回想している。
 在職した会社が製造する金属製品価格も、外国製品対比でそんなものだったのである。だが為替は自由相場制になり、円高が進むようになった。120円の頃までは、外国製品価格とコンパラブルな状態だったように記憶している。我々の給料もそれなりに上がったのだった。良い時代だったのである。
 特に、対アメリカとの関係で種々の貿易トラブルもあったが、大きな問題とはならなかった。
 120円が一つのターニングポイントではなかたのだろうかと思っている。東南アジアの安い賃金を利用せざるを得なくなった。韓国から台湾そして中国、さらにはベトナム等へと手作業を中心としたものが移っていった。在職の仙台工場が各所に設けていた作業加工場や内職者を含めると仙台近辺に一万人くらいの雇用を確保していたことになる。それらがすべてなくなった。

 そんな努力というか企業のやむをえない行動の結果、100円を切って80円台で動いているのだから信じがたいことだ。輸入品は安くなったがそれと対抗する国内品は大変なことだ。

 世の中は全てインフレの方向に向かって動くものだと、そんな概念を持って人生を過ごしてきている。過去にはそんなことで経過していた時もあった。デフレになるなどとの予測は誰ももってはいないはずだ。現在の対策が的を得たものであるのか気になるところだ。
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Commented by moai at 2009-12-04 09:55 x
先ほどイタリアに旅行してきました。食事したり、水を買ったり、タクシーに乗ったりした印象では、90円/ドルのレベルでは円は高すぎないというのが実感でした。ちなみに350mlの水がコンビニで1.5ユーロ、ガソリンスタンドの表示では1L1.2ユーロでした。当地在住の塩野七生さんも確かそんな意味のことを最近書かれていたように思います。一方で工業製品の国際競争力は弱まって、私の少し関与しているプラントメーカーも中国以外の第3国の取引でも売り上げの大半は中国に流れる構造になっています。行き着くところは日本人が生活レベルを下げるしかないような閉塞感を感じます。
Commented by watari41 at 2009-12-04 20:16 x
 円高をリードする産業というのがあるんですね。かつては鉄鋼・自動車などでしたね。イタリアもそんなことですか。仙台の地方紙にも、時々塩野さんの現地リポートが載ることがあります。ユーロ圏のなかでも地域によってバラツキがあるんでしょうね。かつてリラは弱かったような気がしたこともありましたが、現在の日常生活ではそういうことですか。中国は人民元が上がらないように、必死に守っているような感じがしてます。日本のピークは20年前だったと言われてますが、我々高齢者はやむなしとしても若い方々は悲惨ですね。moaiさんコメントをありがとうございます。
by watari41 | 2009-12-02 12:04 | Comments(2)