50年ぶりです

 町の外れに小さな用水路がある。今はコンクリートの堀になっている。少し水面に張り出して小型の電気操作盤が置かれている。地下にあるモーターを制御しているようだ。先日、そこを通りかかったところ、そのメーターをチェックしている男がいた。モーターはどのあたりにあるのかと尋ねてみた。
 男の指差した先にマンホールの蓋があった。男はジット私を見ていたが、あなたは「S」さんではないのかと言うのだ。そうですというと、男が私は「T・T」だよとフルネームを言うのである。驚いてしまった。
 高校の時に私のすぐ後ろに座っていたのである。卒業してから初めて顔を見た。50年ぶりということになる。クラス会にも顔を見せたことがなかった。酒を呑めないからだというのだ。
 一風変わった男だった。我々は電気科であったが、彼は電気に興味をもっていなかったのか、当時話題のサルトルとかカミュの本を読んでいた。実存主義というものである。私も少なからぬ影響を受けた。

 「T」君は、職を転々としたらしい。彼は面白いことを言うのだ。こうして70歳近くになっても飯を食えるのは、電気に在籍していたお陰なんですよというのだから、当時を回想すると何ともおかしなことだ。卒業証書と経験年数で、それなりの国家資格をもらったのだろう。名刺には、プラント会社の技術顧問とあった。

 彼は、私がこの町から仙台に通学していたので、今も住んでいると思って、いろいろと情報を得ていたようだ。月に何度かは来ているので、いつかは遭遇することもあるだろうと思っていたらしい。私の方に意外性があったのである。

 50年が過ぎても電気の原理が変わったわけではない。モーターやトランスにしたところで、小型になっているが理屈は同じである。
 これがパソコンや通信の世界だったら、大変なことだ。50年前にコアメモリーのコンピュータを国鉄で扱ったことがあるので、何とかなるだろうとパソコンを買ってみたがどうしようもなかったという老人もいた。
江戸時代からいきなり現代に来たようなものになるだろう。我々は良い時期に良いものを学んだのだと思っている。
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Commented at 2009-05-16 18:14 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by watari41 at 2009-05-16 20:11
 まずは声を出してみないと何事も始まらないですね。クオリアさんコメントをありがとうございます。非公開コメントになってましたが、誤ってチェックをされたのではと思いますが?
Commented by moai at 2009-05-18 16:04 x
10年早く生まれていたらITの世界の恩恵に浴することはなかったでしょう。特に海外では仕事に、家族との連絡に、娯楽にPC抜きには考えられない生活でした。棋士もパソコンで棋譜を研究し若くして多くの経験を積み実力をつける時代です。仕事もたとえば若い時2-3日かけて手仕事でやった統計解析や図表の作成はたちどころに大量のデータで処理でき、今頃そのありがたみも忘れかけています。若い人にはデータを見て考え、発想することが少なくなる弊害も出てきているように思います。
Commented by watari41 at 2009-05-18 16:36 x
 一瞬にしてデータ処理のできる現代は夢のような時代なんですよね。シグマや相関係数とか実験計画法の処理に膨大な時間を食っていたんですよね。若かったからそんな労力を惜しむこともなかったのでしょうね。今ではとてもとてもです。
 データが何を言わんとしているのかを読み解く力が必要なんですね。昔は如何に早く計算がでるかということばかりを主に考えていたんですが、今や頭の使い方を変えねばならないのですね。専門棋士のようなパソコンの使い方なんですね。moaiさんコメントをありがとうございました。
by watari41 | 2009-05-16 09:00 | Comments(4)