平泉のこと④

 「平泉」に「義経」が加わってくると、ワクワクしてどうしようもなくなる人種の一人である。まさにその小説が河北新報に連載中だ。作者は岩手県に住む「平谷美樹」さんという作家だ。挿絵も同一人である。珍しいことだ。作者は、むしろ絵の方を得意としているのだという。迫力ある挿絵も楽しみの一つである。
 「義経」の影武者であり、知恵袋でもある「沙棗(さそう)」という人物を登場させている。小説の題名も「沙棗」である。「義経記」にこの人物が書いてあるそうだ。だがその名前が「義経記」に記載されているだけで、影武者だとかいうのは作者の創作なのだが、小説家というのは、想像力がすごいものだ。「義経記」も、史書というよりは物語に近いものだそうで、源平合戦のずっと後の時代に書かれたものだという。

 小説「沙棗」の167回目を読んだ。連載も佳境に入ってきた。期待通りの内容で面白い。
 源平合戦のあまりにも有名な「鵯越の逆落とし」や「八艘飛び」などは、平泉ですでに実践していたなどというのも奇想天外なことだ。

 さらに愉快なのは、連載小説と同時進行で、河北新報社が運営するインターネットサイト「ふらっと」のなかで、作者とコラボレーションができるのである。面白い試みだ。誰もが仲間に入りコメントができ、私もその一人である。
 作者の行動力がこれまたスゴイ。4月14日には当時の鳥海柵跡を訪ねた話が載っている。安倍頼時が前九年役で戦死しているところだ。周辺地域の描写もまたすばらしい。
 私は、こんな短文を書くのにさえヒーコラしているが、作者は毎日のように旅し、そのブログを書いて、コメントに応え、さらに小説を書いているのである。恐れ入るしかない。

 「義経」は悲劇のヒーローだが、もともと兄頼朝と戦おうというような気はさらさらなかったようだ。秀衡は奥羽の大将軍にと考えていたようだが、義経とはかみ合っていない。興味あることは、我々は、これまで「金売り吉次」としていた男を平泉の黒幕として登場させていることだ。平泉政権に天下を狙わせているのだ。そのために京都の鞍馬から義経を平泉へと誘いだしたのだ。小説では「橘司」として登場させている。

  新聞を読めない西国の方々に「ふらっと」を紹介しておこう。トップページの右側に「沙棗コミュ」の入り口がある。覗いて見てください。私はネットに入っている中では最年長の部類かもしれないが、この小説やネットコラボを読むのも楽しみな日課としている。
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Commented by クオリア at 2009-04-16 17:20 x
義経は兄頼朝に殺されていなかったら源氏の歴史はどうなっていたのでしょう そんな小説があったら読みたくなります。
親族同士の殺し合い 人間とは?と思う反面興味があるのは悲劇があるから歴史として伝承されるのでしょうが
大戦中の人物伝記にはあまり人気がない原因は人間の心を刺激する「ロマン」がないせいかも知れないと思ったりしています
「ためになり楽しい小説記事ありがとうございました。」
Commented by watari41 at 2009-04-16 20:04
 太平洋戦争を描いた小説はまだ出ていないようですね。ミッドウエイ海戦とか個別のものはありますが、全体を俯瞰したものは無いようですね。日露戦争には「坂の上の雲」がありますが、今次大戦は難しいんでしょうね。
 日本の内戦は親族間の争いが多いんですね。ただ女系同士だとまとまりやすいんだとか。男系の場合はどうしもこじれてしまうとか。クオリアさんコメントをありがとうございました。
Commented by schmidt at 2009-04-17 15:01 x
 わたしも楽しみに読んでいます。ユニークな義経像ですよね。作者の旺盛な仕事ぶりには本当に感心してしまいます。
Commented by watari41 at 2009-04-17 16:03
 義経小説は数限りなくあるのでしょうが、今回の平谷さんの視点には、現代を感じています。schmidt さんコメントをありがとうございます。
by watari41 | 2009-04-15 20:16 | Comments(4)