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余日録


by watari41

おくりびと/葬儀変革へ

 海外でのあまりに高い評価に見ずにはおれなくなったのだろう。すごい観客だ。私もその一人である。前の席しか空いておりませんといわれる。やむを得ない。42インチTVを1mの近さで見るような感覚だ。
 山崎努が実に良い。重厚さが光る。納棺会社の社長役で出ている。山崎あってのアカデミー賞というような気がした。
 もちろん主演の本木雅弘の熱演。そして大人になった広末涼子、これらの絡みも面白い。だが、山崎がいないと薄っぺらな映画になっていたかもしれない。映画全体に重みを感ずる。吉行和子などキャストが成功している。
 脚本も良い。前半で笑いをとり、中盤に納棺の技を見せ、終盤のポイントが”石”なのである。川原に転がっているなんともない石ころが物語る。上手いまとめかたをしたものだ。
 山形を舞台にしているのが、これまた良い。東北人だからそう感じるのか。山形県の良さが良く出ている。出羽三山など、仏に近い環境と言ったら失礼だろうか。
 また、喫茶店、納棺会社の雰囲気が古びた”洋風”なのが狙ったところなのだろう。和風ではこの映画には似合わないのだ。審査員の心を掴んだのではなかろうか。

 葬儀は生きている人のためのものだ。死者を如何に生前の状態に近づけるかが、納棺屋さんの腕の見せ所なのだ。死体を取り扱う技に能や茶道などの日本の儀式を感ずるという論もあるが、それだけばかりではないのである。
 死者は穢れたものというイメージが現代においても強い。この映画を機会にして、義理とか何やで、聞き飽きるくらいになったお経を聞かねばならぬなど日本の葬儀事情を見直す機運のきっかけになればと思っている。
Commented by morikou at 2009-03-05 16:19 x
アカデミー賞決まった日に ロスから電話。「DVDをすぐ送ってほしい」とのこと。それらしい店に尋ねると3/18から 売り出しだそうです。此方も予約しておかないと なくなる?
最初の上映は昨年10月ごろだった?題名みて あまり乗り気のないまま見に行ったんですが 直後の感想がじめじめさがなく スッキリした気持ちだったの思い出します。そのコロwatariさんの評論も あって やはり良い映画なんだなっと 思っていました。
Commented by watari41 at 2009-03-05 21:43 x
 「核の棺」という題名の回想にありましたね。私は予告編でも見たのでしょうか。当初から評判のよい映画でしたね。私の書いているのも適当なもんです。
 そうでしたね。北米にmorikou さんの、ご親族がおりましたね。DVDをすぐ送れですか。これまた大変な売れゆきになるんでしょう。映画はもう30ケ国くらいに出されているそうですね。
コメントをいただきありがとうございました。
Commented by クオリア at 2009-03-06 16:15 x
watari41さん 世界羽ばたく日本映画・ノーベル賞・美術すべての分野ですね 心配なの技能工の働く場所もなくなり少子化の影響を受けるでしょう 心配しています。「おくられびと」近い私は回想さんの評論のとおり義理や人情での葬儀はマッピラゴメンですよ。
Commented by watari41 at 2009-03-06 17:46 x
 酒田の風景がよかったですね。撮影場所もよほど考えてのことだったのでしょうね。一時期落ち込んだ邦画もすっかり持ち直しておりますね。まだまだ、おくられることのないように生を愉しんでください。クオリアさん、コメントをありがとうございます。
Commented by moai at 2009-03-07 10:45 x
おくりびとこの1月機中で小さな画面で見ました。すでにノミネートされていましたから興味を持ったのですが小さい画面のせいかテレビの紹介と比較して見逃しているところが多かったです。morikouさんのコメントの通り扱っている題材が死なのに後味が悪くない映画でしたね。アカデミー選考委員の一人が死者の下半身にふれはっとした所作をユーモアと受け取っていたのに対し日本人のたしか評論家だったと思うが「あれからは死者(オカマ)の悲しい人生が読み取れた」と語っていましたが、国民性によって受けとめかたが違うのは当然ですが、アメリカでもこのたび全土で上映されるようですね。
Commented by michiko at 2009-03-07 14:55 x
「おくりびと」を受賞後観に行った方達は 満員で朝一のつもりが夕方の時間帯しか座席がなかったり、一番前の座席で見上げるような姿勢で観たので肩が痛くなったとか云っていました。きっと、又再上映のこともあるでしょうから その時を待っていましょう。
Commented by watari41 at 2009-03-07 20:51 x
 最初のシーン、確かに日米でオカマに対する考え方が違いますが、父親の悲しい言葉が何とも良かったように思います。審査委員を考えて、脚本を作ったんだとすればスゴイですね。
 この映画は、人間の死をぐっと近づけましたね。葬儀の映画や物語、死を迎えるまでのものはありましたが、その間のことが抜けてましたね。特に子供は見るべからずなどといわれていたものです。巧妙に隠していたものでした。そんなタブーも崩れていくんでしょうね。
 レーニン、スターリン、毛沢東など、そのまま保存されてますね。唯物論の国なんですね。大江健三郎さんの芥川賞だったでしょうか「死者の奢り」というのがありましたね。医学生用の解剖を待って、アルコール漬けにされている死体と、それを取り扱う人だったと思います。
 物体に過ぎないという考え方は、案外正しいのかもしれませんね。
 moai さん、コメントをありがとうございます。

 michiko さん、長時間、首をそらして見るのは、あんまりよくないんですよね。美術館でそんな姿勢で、具合が悪くなった人のことをやってましたね。そのうちにゆったりと良い席で見れるようになると思います。コメントをありがとうございます。
by watari41 | 2009-03-05 15:45 | Comments(7)