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余日録


by watari41

江戸の旗本(前)

 1991年に出版されたもので、当時既に話題になっていた本だが読みはぐれていた。たまたま、最近の古本市で見つけたので紹介したい。
「旗本の経済学」著者:小松重男、発行:新潮社である。「旗本退屈男」とか物語の面白いものは数多くあるが、これは一人の旗本の58年間に渡る実録で本人自筆の貴重なものである。副題は「御庭番川村修富の手留帳」である。

 川村修富は1761年(宝暦11年)に下級旗本の次男として産まれた。当時は貧乏旗本の次男坊は悲惨だったとされる。生涯を兄に面倒をみてもらうことになる。兄が亡くなるとその長男に厄介になるというみじめな一生を送るものが多かったとされる。運がよければ同格旗本の婿養子になる程度だった。
 彼も子供の頃は、そんな一生を考えていたのかもしれない。手先が器用だったこともあり、家の雑用などをこまめにこなしていて兄嫁から褒められていた。
 そんな中で17才の時にとんでもない僥倖が訪れる。新規に旗本として召し抱えられると兄から伝えられた。江戸城の役職に空きが出たのかもしれない。
 修富は分家することが出来ると同時に嫁さんをもらうことができたのである。
 役目は「御庭番」である。名称からすると江戸城に出入りする植木屋などの管理人などのようだが、本業は「密偵」スパイなのである。
 8代目将軍「吉宗」の時代に創設された。命令されれば全国の各藩にそれとなく忍び込み、藩内の状況をレポートして老中に提出する。しかし修富には、その才能がなかったらしく一回のみ、その役目を果たしたことがあるが報告書が評価されず、それのみで終わってしまったのだが、生真面目な性格と仕事ぶりが買われて、他の分野で徐々に出世を遂げて高齢まで生存できたこともあって高禄を得るようになる。
 


by watari41 | 2023-01-12 22:04 | Comments(0)