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余日録


by watari41

藤沢周平作品

 時代の空気がメディアを動かしているのか、それともメディアが時代を動かすのだろうか。
 このところ、藤沢周平作品を2つみた。NHKの連続時代劇「馬の骨」と映画「蝉しぐれ」だ。映画はもう何年も前から準備されているので、たまたまこの時期にということなのかもしれない。「蝉しぐれ」は、小説を読み、連続テレビドラマでも見て、今度は映画の鑑賞である。傑作小説の場合には、映像がそれを超えるのは難しい。読んだ印象が強いので、どうしても映像がそれなりに評価されるのはやむを得ないことだ。

 テレビドラマでの「蝉しぐれ」は、小説のラストシーンを冒頭にもってきて全体を回想シーンとする構成だった。物語の展開からいって、なるほどとは思ったがイマイチの感じを受けたものである。
 映画はさすがに迫力がある。巨木やお寺の情景など実にすばらしい、庄内で撮影したものではないのかもしれないが、山形県庄内地方のイメージアップに大いに貢献していると思う。内容の濃い長編小説をどうやって2時間にまとめるのかと思っていた。物語では秘剣とか処刑者の美人妻を扱った部分がかなりのスペースを占めていたが、映画ではこれをさらりと流した脚色は流石である。
 映画は映画なりに楽しめばよいのであり、原作とのかかわりをあまり詮索することもないのだろうと思う。

 藤沢周平さんは、司馬遼太郎さんと対比されることがある。藤沢さんは名もなき市囲の人々を取り上げることが多く時代の哀歓が漂う。対称的に司馬さんは、歴史上の変革期に出てくる英雄を取り上げている。どちらの作品も面白い。これは両者の作品に現代社会に通じる何かがあるからなのだろう。

 藤沢さんは江戸時代の人を通じて現代を語り、なおかつ活劇を取り入れて話を面白くしている。若い頃は、司馬さんの小説に引かれたのだが、年齢を加えるに従って藤沢作品が面白くなってきた。また今の時代雰囲気が藤沢作品的なものを求めているのだとも考えている。
Commented by akiyama at 2005-10-17 09:46 x
10年前までは司馬さんの作品に傾倒していました。最近は、藤沢小説や
人情、ぬくもりを感じるものが好きになりました。
Commented by schmidt at 2005-10-17 10:50 x
 若い頃は司馬、ある程度年をとると藤沢-というwatari41さん、akiyamaさんの見方になるほどと思いました。藤沢の場合、江戸を描いていても、市井に生きるわたしたちの心の動きと、どこかオーバーラップする細やかさがあるような気がします。司馬作品の場合、読み手の状況によっては、国家観や人間像についての意識が時には過剰に映るし、その意図からして、主人公が生きた時代をなぞるのにエネルギーを費やす必要があるので、歴史教科書を読んでいるような感じがするときもあります。それはそれで優れているのですが、読み手の心に寄り添ってくれたり、表現された風景に読み手の側が同化できたりするので、藤沢作品は市井の経験を経るほどに味わいが出てきます。
Commented by watari41 at 2005-10-17 20:08 x
 シニアの為の読み物ともいうべき藤沢さん名作の一つ「三屋清左衛門残実録」があります。会社の大先輩から薦められて読んだものでした。何とも味があります。
 バブル以前には、司馬作品が大河ドラマなどでよく取り上げられておりましたね。時の時代背景というのが大きく左右するように感じております。
 akiyama さん、schmidt さんコメントをありがとうございます。
by watari41 | 2005-10-17 07:24 | Comments(3)