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余日録


by watari41

義理と人情

 「義理がすたれりゃこの世は闇だ」
 古き時代に郷愁を感じる我々世代にとっては、何とも懐かしい文句である。
 高倉健さんと菅原文太さんの相次ぐ訃報は、こんな時代に一区切りしたことを納得させるものだ。お二人の俳優は良き時代に恵まれて活躍した。網走番外地、実際の刑務所はそんなものではないことを、そこを退職してから、偶然にも我が町に竟の住屋を求めた同年代の方から聞いたことがある。我々には映画に酔いしれる下地があった。
 任侠映画が終わってからも、お二人の演技力は大スターであることを証明していた。

 12月8日の真珠湾奇襲攻撃から73年となる。私はその前に生まれているので、一応は戦前派ということになる。開戦後にアメリカでは日本人の精神構造の分析が行われた。その一員であるルース・ベネディクトさんは「菊と刀」の著作があり、見事に「義理」の考え方など日本人を解剖している。現在の日本人も同様かといえば疑問がある。しかし私などの世代までは十分に理解できるし、そんな行動様式をとっていた。
 先日のテレビ、歴史秘話ヒストリアで日本軍からハワイにスパイとして送り込まれた人の実話があった。驚いたのは終戦後にアメリカから聞き取り調査をしたということに、本人の当時上司だった課長が、日本の為に真実を話さないでほしいと懇願していることである。
 無条件降伏をした後でも、実践に加わっていない、いわゆる現場を知らない人というのは、そういうことを平気で言うものだと思った次第である。人情に訴えたのである。
 本人は、そんな要請を無視して、本当のことを語ったのは幸いだった。

 文太さんは、宮城県の出身であり「ささにしき」の宣伝を買って出た。
 味のある方々だった。同県人ということもあり、親しみを抱いていた。
 後半生は、俳優はもちろんだが、農業とはどういうものかを自ら実践し、人権擁護活動家でもあった。現状を憂いていた人だった。東北人の立場に立った物言いをしていた。惜しい方であった。
 日本は、すでに闇夜の世界に突入したのかもしれない。


by watari41 | 2014-12-07 16:55 | Comments(0)