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余日録


by watari41

核リテラシイ

 原子力研究所でバケツに入れた核物質が臨界反応を起こして2人が死亡する事件が起きて、唖然としたのはもう10年以上も前のこと。バケツで扱う品物では無いと誰しも思ってはいるが、さりとて殆どの日本人には核物質の知識があるわけではない。現在だって同じである。

 リテラシイとは基礎的素養のことを言っているのだと考えている。メディアリテラシイとか、いろんなところに使われている。我々の物理リテラシイはおおよそ「ニュートン力学」の範囲内でしかない。現役を離れて久しいが現代工業社会も分子とか原子のレベルで事足りていそうである。

 しかし電気エネルギーの分野では、総発電量の三分の一を核分裂に頼るようになっていたのだから不思議と言えば不思議なことだ。専門家は極くわずかしかいない。
 我々には、原子の中のさらに奥にある核が分裂するということは、核モデルで示されてイメージとしては、何となくわかるが、それ以上のものではない。
 それによって発生する大量の核物質は、自然界にはごく微量しか、もしくは全く存在しないものだ。我々の理解を大きく超えている異次元物質ともいうべき物なのである。きわめて有害だ。林立する巨大なタンクの群、それだって妥当なものかどうかわからない。そのうちに漏水を防ぐ巨大な万里の長城みたいなものを築かなくてはならなくなるかもしれない。

 原発事故を機に、原子力イコール「安全」から「危険」へと我々の認識は大きく転換したのだが、その本質的理解には一歩も踏み込まれていないのが実情である。
 吉田所長の決死の行動は、それによって東日本に人間が住めなくなる事態を防いだのか、あるいはまだ足らざることがあったのか、我々には何とも評価ができない。死者に鞭打つようで申し訳ないことだ。

 パソコンが爆発的に普及するに当たりICリテラシイが大事と、小・中学校に導入され、社会人・老人にもそれなりの啓蒙・教育があったものだ。莫大な金額が投入されている。何らかの役には立ったはずだ。

 「核リテラシイ」が全国規模であってもよかったはずだがなされなかった。今からだって遅くはない。核使用の是非を理屈で中学生にもわかるレベルで教えてほしい。そんなこともなくて、原子力のアンケートをとったりしているのだから何をかいわんやである。
 ガソリンが危険な液体であることは、誰だってわかっている。それ故に特殊な容器がある。しかしその安全操作を誤ったばかりに大惨事が起きてしまった。事故原因を説明されれば誰にでもわかるはずだ。
 しかし原発内で何が起こったのかは、いまだわからない。説明されても理解できないかもしれないのだ。

アインシュタインの特殊相対性原理のエネルギーに関する結論だが、我々が理解できるのは、右項の運動エネルギーに関するものでしかない。光速の二乗に質量を掛けるという左項を、偏微分方程式を使うことなく、わかりやすく説明できる方がいたらお願いしたいものだ。
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by watari41 | 2013-08-22 21:03 | Comments(0)