人気ブログランキング | 話題のタグを見る

余日録


by watari41

言葉が立ち上がる

 2年前の今頃、ボランティアの団体バスに乗って大阪から気仙沼にやってきた同級生がいた。彼は年齢のことなどもあり力仕事は出来ないのでと、もっぱら被災者からの話を聞く役をやったそうである。関西弁を使う人に現代東北人は話しすいのだろうと感じたそうだ。
 話すことによって人は癒さるところが多いにある。「傾聴ボランティア」という言葉もある。
 (今回、松島にての同級会の一話である)

 あまりにもつらい体験は上手に聞き出さないとストレスとしてため込んだままになってしまうようだ。

 5月12日には震災復興記念講演会で柳田邦男さんが我が町でお話しをされた。
 「生き返す」というようなテーマである。それには言葉が如何に重要であるかの例をいくつか示され感銘の深いものだった。短い言葉の俳句でもその人の一生の心の軌跡を辿れるということだった。晩年には俳句の達人ともなられたハンセン氏病の方の若いころからの俳句の変遷をしめし、病気故に世間から疎外されていたが最後には全てを受容して、仏のごとき心境に至る様が17文字に込められていた。多言を要しないとはこのことだ。
 
また、シベリア抑留者の生存ギリギリの状態を、誰にも語らなかった男が、最晩年にふとしたキッカケで家族に話したそうだ。そんなつらい体験をしてたのかと、墓参りの都度家族は思い出すそうで、何も話してくれなかったら寡黙なジイチャンで終わってたところだったという、そんな話もあった。

 言葉を正確に使う上で重要になるのは辞書である。その編纂の模様を小説にした「舟を編む」三浦しおん著に、言葉の重要性として「記憶とは言葉である」とも書いてあった。どういうことかと言えば、味・香りなど五感に関することも、どんなことかと記録しておくことで、再現しやすくなるのだという。すばらしい味というだけではなくて、具体的にということだが多少難しいことでもある。

 近隣の方で明治時代に小学校を優等で卒業した記念に大槻文彦博士編纂の辞書「言海」をいただいたそうで、それは大事にされていたことを回想している。
Commented by Schmidt at 2013-05-20 18:29 x
失敗するのも言葉。言いようのない幸せをもたらしてくれるのも言葉です。年を重ねるにつれて、ぼんやりと分かるようになることもあるんですね。
Commented by watari41 at 2013-05-21 11:07 x
その一言で全てがひっくり返ってしまうなどということがありますね。言葉に騙されるなどのこともあり多少複雑ですが。 Schmidtさんコメントをありがとうございます。
Commented by クオリア at 2013-05-21 20:12 x
人間の発する言葉は怖いですね。人を殺す事にもなり得るのですが 犯罪とはなりませんのですね。
ブログを書いていて いつも思うことです。
感謝されることもあります。ですから言葉は鋭い刃と思って居ます。
話は変わりますが5月22日(火)に遊離館で朗読会がPM1時30分よりあります。良かったらお目にかかりましょう。
Commented by watari41 at 2013-05-22 17:33
22日は予定が入っていて参加できませんでした。残念なことです。当地では悠里館と呼んでおります。
言葉の両側面はいつも感じることです。クオリアさんコメントをありがとうございます。
Commented by ようこ at 2013-05-25 18:10 x
「ことば」は、深いですね。
気がつかないうちに人を傷つけてしまったり、また反対に、人を励ましたり。
最近、入院した方のお見舞いに行きましたが、そんな時の話題もけっこう難しい。
言葉については学ぶことが一生続きます。
Commented by watari41 at 2013-05-25 21:17 x
柳田さんは講演で沢山の句を示されました。その一つ、
精神病を克服され、飯館村に移り住んだばかりの40代女性が、今度は放射能で住まいを奪われる。その小林さんという方の一句。
<福島飯館それでも世界は美しい>
なかなか、こんな言葉は出てきません。
人を励ます言葉も時と場合により異なりますね。
ようこさんコメントをありがとうございます。
by watari41 | 2013-05-20 16:24 | Comments(6)