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余日録


by watari41

ミイラと白骨

 近代国家で、個人の生死がはっきりしない人数は日本が例外的に多いのだそうだ。これからもミイラや白骨が続々と出てきそうだ。

 やや古い本で恐縮だが「レーニンをミイラにした男」という、2000年初版の本がある。この遺体の顔は、今や世界中の多くの人々が知っている。これがどうように作られたのか。ソ連の権力機構とどんな係わりがあったのかという内容なのである。
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 著者は、イリヤ・ズバルスキーという1909年生まれの方で、実際に遺体を取り扱ったのは、その父親の生化学者である。著者もその道に進み、その後遺体の保存に尽力することになる。

 近代民主主義の国では、こんな遺体保存などという馬鹿馬鹿しいことは行わないが、専制国家では必要としたようだ。毛沢東、金日成などの遺体保存もこの著者らのチームが行ったということだ。

 1917年レーニンの主導によってロシアで社会主義革命が起こった。だがその体制がまだ整わない24年にレーニンは死去してしまう。慌てたスターリンなどの首脳部は、その権威を保つために、レーニンを生けるが如く保存する計画を立てた。最初は冷凍すればよいと思ったらしい。極寒のシベリアでマイナス30℃にさらしたが徐々に朽ちてきたということだ。
 著者の父親は細胞学を専門としており、化学処理するしかないと、遺体を預かり、開発した特殊な液体で血液を代替し、全身を液に漬け、朽ちた顔に足の皮膚を移植するなどの工夫があったそうだ。

 百年近く経過した今も、生けるが如く存在している。しかしと著者はいう、再革命も起きた現在この遺体はどんな意味を持つのだろうかと問いかける。早く埋葬してやるべきだと訴えている。

 現代日本にも早く埋葬すべき遺体と共に暮す肉親が多いのだろう。遺体の年金が当てにされている。それがないと餓える人もいるのだろう。何とも悲しい経済大国なのだ。

Commented by ようこ at 2010-09-06 13:50 x
「ミイラと白骨」まあ、ぎょっとするタイトルですね。
私もヨーロッパのカソリックの教会で、眠っているかのような聖女のミイラを拝観したことがあります。
「レーニンをミイラにした男」の話し、今晩の話題にしましょう。
Commented by michiko at 2010-09-06 13:51 x
若い人達の生活の為にもおじいちゃんが元気で生きていてもらわないと・・・・、と聞いた事があったのは  もう10年前のことでした。
Commented by クオリア at 2010-09-06 14:17 x
未来の医療が進歩すれば冷凍保存していた死体が解凍して生き返るとおもっていたのでしょうか今でも冷凍保存を希望する人もいるそうですね冷凍保存にかかる維持費は高額でしょうに永遠に生きる研究もなされているしおかしい世の中になってきました。地球が凍結し新たな哺乳類が誕生するのがしぜんですね。
Commented by watari at 2010-09-06 21:03 x
 話題提供ができて、うれしいことです。
ようこさん、コメントをありがとうございます。

michikoさん、現在も尚一層必要とされているようです。
孫が大学をでてるまではと。コメントをありがとうございます。

冷凍保存には致命的な欠陥があると書いてありましたが、-30℃だったからNGで-200℃くらいになればOKなのか、何ともわかりません。維持費のこと、レーニン廟研究所には、かなりの人数がいたようで、莫大な費用を使っていたようです。クオリアさん、コメントをありがとうごあいました。
by watari41 | 2010-09-04 21:00 | Comments(4)