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余日録


by watari41

虚と実の世界

 春の彼岸に入った。休載中にもかかわらず多くの方々のご来訪に恐縮しております。この機会に再開するとします。「お彼岸」は、何とも音韻の良い言葉である。昼と夜の時間が同じになってあの世と、この世が接触する日でもあると解釈したい。現世がつらかった昔の人は、ハスの花咲く西方浄土に極楽を感じていたのだと思う。
 今や現世が極楽浄土の人が多くなった。あの世にゆけば良いことがたくさんあるというのは、昔の人々の死への苦しみを和らげたことであろう。しかし今やその死をどのように受け入れるかが大問題でもある。

 昼と夜とが同じ時間になるこの時を彼岸とする考えも面白い。今や「千の風」の時代だが、墓前であの世の方々と語り合うというのは、日本人のものの見方と合致するようだ。天文学は昔から発達しているので真東から太陽が昇り、真西に日が沈む特殊な一日は昔から知られていたのだと思う。
 しかし、生きている間は「実」の世界であるはずだが、あの世は「虚」ではなかろうかと思う。

 虚実あいまってなどの言葉もある。
 ここで話を180度転換してしまうが、数学の世界にも「実数」と「虚数」というのがある。実数はご存知のとおり日常的に使っている。実数でないものが虚数である。文字で書いてもわかりにくいが、√-1【(ルートマイナス1)(-1がルートの中に入っている)】これが虚数である。電磁気学を学び始めた頃に、この虚数の概念を理解できると電気工学は非常にわかりやすくなるのである。
 ゼロを発見した人もエライと思うが、虚数の発見というのだろうか、それを作り上げた方も近代科学技術に大きな貢献を果たしたのだと思う。実数と虚数とを組み合わせたものを「複素数」と呼んでいるが、これが電気の現象を数式で示すことになり、いろんな問題を理論的に解くことができるのである。難しそうなことを書いてしまったが、私は50年も前には、このことで頭を捻っていたことを回想するのである。

 またまた話が飛んでしまうが「虚無主義(ニヒリズム)」というのがある。人間界を縛る道徳・倫理などは、何も無くても良いとする考え方である。本当はもっと深遠なる思想なのであろうが、簡単に言うと前述のようなことだ。
 これに対して「実存主義」という考え方があるのだから面白い。目に見えるもの、すなわち実際に存在するものだけを信ずるというものである。従って運命的なことは否定すると言うことだ。これも単純に書きすぎている。もっと深い意味があるのだろう。

 なにしろ、19世紀から20世紀にかけて、ニーチェとかハイデッカーなどという有名な思想家が唱えているのである。とにかく人間はいろんなことを考える。パスカルという人は「人間は考える葦である」と言ったそうだがその通りだ。あの世のことから、物理のこと、そして哲学までをである。我々も浅はかながら、何かを考えるとボケの予防くらいにはなりそうだ。
Commented by ようこ at 2008-03-19 05:49 x
「春のお彼岸の話」かと思ったら、虚数の話や思想家の話にまで展開してゆき頭の引き出しをたくさんお持ちですね。
引き出しがたくさんおありになる。watari41さんは、技術者としていい仕事をなさったのでしょう。

昨日仏壇のお花を換えましたが、今日はお仏壇のお掃除の日です。
お墓が遠方にあるので。
Commented by michiko at 2008-03-19 13:37 x
「虚無主義」とか「実存主義」という難しい思想はわからないのですが
自分の前に起こる出来事は良い事も一見悪いことも、その人にとって
必要、必然、ベストで無駄な事は何も無いという考えもありますよね。
Commented by watari41 at 2008-03-19 14:00 x
 つまらないことを思い浮かべて文字にしているという感じがしなくないこともありませんね。ようこさんのおっしゃるように引き出しを沢山持ったのかも知れませんが、ろくなものしか入ってないようです。

 難しいことを考える人は、日常的なこととは別の次元にあるんですね。我々は、michiko さんのおっしゃるように、目の前におこっていることを処理するしかないんですね。

ようこさん、michiko さんコメントをありがとうございました。
Commented by コオリア at 2008-03-19 16:07 x
今年も彼岸を迎えます。一年が廻るのは早く感じるこのごろです。
人間は宇宙をも見極めようとしていますがこれも,

< 目に見えるもの、すなわち実際に存在するものだけを信ずるというものである。 >のことの延長線上にあるのでしょうかね
宇宙の解明はなにを人間にもたらすか楽しみです。
Commented by watari41 at 2008-03-20 12:13
 宇宙の広大さやその誕生の謎は、物理学の課題であり、もた思想上の問題にもなっているのですね。
 宇宙のはてはどこまでなのか、いつまで膨張を続けるのかなど、いろいろ面白いことを人間は見極めようとしていんですね。コオリアさん、コメントをありがとうございます。
Commented by カメチャン at 2008-03-20 22:53 x
5日前、長いこと患っていた女房の父親が94歳で死んだ。近所のおばさんがお悔やみの言葉として”ちょうど良い時期に亡くなられて良かったですね。今は丁度彼岸ですから浄土の世界へ行きやすいですよ”だそうです。何か関係があるのかな?と思いました。
しかし、葬式仏教はいかんですな。葬式時、坊さんに払うお布施は時間給にして20万円/時間にもなり、これは僕の退職前の給料の半分です。およそ馬鹿げていると思いました。見栄と自尊心の複合競争を宗教界が煽った結果です。この様な状況は長くは続かない思いました。お寺は本来のあるべき姿に早く立ち返らないと、仏教界は破綻しまっせ!
Commented by watari41 at 2008-03-21 14:23 x
 昔の殿様のような葬儀を一般の人たちがやるような時代になているんですね。そういう感覚での「お布施」なのですね。わけのわからないお経を聞かせられて、まったくカメチャンのいうように「仏教界は破綻しまっせ!」
 葬式仏教なら、それはそれでかまわないのですが、りーゾナブルな価格というものがあるはずなんですがね。
 彼岸の意味というのは、私もよくはわからないのですが、浄土がこの世に近づいた日とでも捉えるべきなんでしょうね。我々には、どうもピンとこなくなっておりますね。コメントをありがとうございました。
by watari41 | 2008-03-18 11:03 | Comments(7)