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余日録


by watari41

人情を食う

 今年のNHKの終戦特集で「731部隊」と「インパール作戦」をみた。
 戦争の悲惨さを語るものとして、これまで断片的には何度も取り上げられているが、今回は総集編みたいなものだと思った。
 とんでもない人が指揮官になると、こういうことになるという見本みたいな形で牟田口さんという三個師団を率いたインパール最高司令官がいた。その一言一句をメモとして残していた方がいてまだ存命だったのである。しかし、メモはその人から出た話ではではない。本人は戦後何も語ってはいなかったようだ。戦場で倒れた時にメモ帳が離れ、誰かに拾われて現在に残ったのであろう。超高齢となり老人施設にいた当のメモした本人が驚いていた。あまりに悲惨なことは、なにも話したくはないというのが人間である。
 戦場に行ったにも係わらず家族には何も話さないまま亡くなったという軍人は数多い。

 たまたま、今年のお盆に曹洞宗の坊さんから「人間は人情を食べる生き物である」という話を聞いたところだったので、奇妙な一致に驚いた。
 牟田口さんは、当時の軍上層部の人情を食べてしまい、あげくには何万人も戦死させてしまっている。
 もともと「大本営」には、インドに侵攻するインパール作戦というのは存在しなかったそうである。無謀だと唱えた部下である3人の師団長を臆病者として取り換えた。
 作戦を上申した稟議書が残っている。有り得ない作戦としていた、大本営作戦課長も最後には印を押している。
 敵軍の砦を落とすには、自軍に何千人かの死者が必要だと言っているのだから驚くしかない。戦争の実態はそんなものだと言ってしまえばそれまでだが、今も生きている老人は、過酷な戦場でも将官クラスになると生き残る人は多いのだとか。
 牟田口さんも戦後ずっと生きていた。自分の作戦に拘りがあったのだろう。英軍に自分の作戦を評価した人の本を終生持ち続けた。
 「731部隊」幹部も帝国大学医学部教授などと人情を食い合っていた。

by watari41 | 2017-08-20 21:09 | Comments(0)