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余日録


by watari41

様式美

 先ごろの夏場所で優勝を決めた朝青龍が土俵上でガッツポーズを示した。今は見ていて何の違和感もないが、30年前なら非難ゴウゴウだったにちがいない。
 当時はホームランを打ったり、三振をとったりした時に、ガッツポーズする選手をみて、舶来のスポーツだからこんなことも許されるが、土俵上でマゲをつけた力士がこんなことをしたらみっともない、日本古来の「伝統美」を保っている相撲の世界ではありえないこととされていた。

 だが、時の移ろいは、あっという間である。伝統もだんだんとおかまいなしになってきているようだ。日本の伝統文化は、どちらかというと「様式美」に彩られている。
 茶の湯などがその代表例であろう。相撲もまさにそうだ。わずか数mの距離にいる力士を土俵に上げるのに朗々たる声を響かせる呼び出しがいる。横綱の土俵入りは「様式美」の極地であろう。

 「古式に則り神事を・・」をというようなことがたくさんある。相馬野馬追いの出陣式には、神前で「カクカクたる武運を・・」をというような形どうりの昔ながらの誓いの言葉をのべる。今の時代に何ともおかしなことのように思えるが「様式」を大事にする。「伝統を守る」というのはこういうことなのだろう。

 戦国時代には一騎打にも独特の美学を求めたようだ。現在も日本での柔剣道の試合は、礼に始まって礼に終わる。
 囲碁将棋では、終局後にお互いに頭を振りあい、どちらが勝者かわからない場合がある。相手をいたわるというか、失礼にならないようにしているようだ。
 ガッツポーズには、自分よがりのところがある。そのポーズは今や当たり前になっているが、日本の「様式美」も少しづつ失われていくように感じている。
Commented by schmidt at 2005-07-27 23:24 x
 歌舞伎など高尚な芸術の世界は皆目分かりません。様式美を下世話なところで考えると、どうしても時代劇の世界になってしまいます。最近、映画の時代劇は死滅したも同然ですし、テレビの時代劇は例外なくホームドラマです。残念なことです。
 子供のころ見た映画で覚えているのは、また旅物の決闘シーンで、三度笠やカッパを空に舞い上げるシーンや江戸城将軍ご出座を大名が平伏して迎えるシーンなどで、いずれも様式美の世界です。
Commented by watari41 at 2005-07-28 08:26 x
 水戸黄門のラストシーンも美かどうかは別にして、なくてはならない様式ですね。このシーンを見たいがためにテレビをつけているというようなことがあります。
 日本人は、型というか決まった様式を好みますね。それをまた独特の美学に高めてしまうのも得意ですね。柔剣道や薙刀の型なども長い年月をかけて、美しく見えるようにしたのではないのかと考えています。
  schmidtさんコメントをありがとうございました。
Commented by schmidt at 2005-07-28 10:16 x
 様式美については、いろんなことを考える必要がありますね。単なる「型」と違うのは「様式美」は「美」そのものでなければならず、そこには当然のことながら「思想」というか世界の秩序に関する哲学が伴います。サッカーという競技はわたしは大好きなのですが、ゴールを決めた直後に抱き合って喜び、馬鹿騒ぎする姿だけは好きではありません。そこには敗者への思いやりや心の持ちようといった「美」が完全に欠如しており、いうなればローマ時代のコロセウムで人と人が殺し合うのを見て興奮した人々と質的にはなんら変わらないからであります。「様式」ときには「型」を軽視する風潮がとみに募っていますが、世界を構成する思想が欠如しているという点で危機的だと思います。イスラムという「様式」を尊重できない非イスラム社会のありようが問題なのは、人間社会を、全体として構成しようとする「美」が欠落しているからです。なんちゃって。失礼しました。ちゃんちゃん。(ようこさんのまねです)
Commented by watari41 at 2005-07-29 08:56
 大上段にふりかぶって「様式美」などとしましたが、schmidt さんの言われるように深遠なるものがありますね。「美」を感ずるには、その思想的背景がありますね。
 日本庭園と西洋庭園はまったく異なるものですが、枯山水様式が進化して、その極地ともいえる京都竜安寺の石庭の美というのは哲学そのものなのだろうと思うのです。それを見て何も感じない人もいるし、宇宙を感じる人もいるという具合ですね。
 イスラム、キリスト、仏教それぞれの世界観が違うように、その様式や美の感覚も異なって当然なのでしょうね。少しえらそうなことを書いてしまいました。
by watari41 | 2005-07-27 09:19 | Comments(4)