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余日録


by watari41

宮城県亘理郡

 宮城県亘理郡_a0021554_11351953.jpg私の住んでいる地域が亘理郡で、山元町と亘理町から成っている。
 古代には磐城の国亘理郡とか陸奥亘理とか呼ばれたこともある。宮城県となったのは明治以降である。
 先日、知人が自家出版した『山元町での鉄生産に始まる古代東北の物語』というA4版64ページの冊子を持参された。知人の著者は「菊池文武」さんである。長いこと仙台で女子高校の地理の教師をされていた。常磐線の山下駅前に居住している。3.11震災では、大きな地震の後で巨大津波が来ると判断して、真っ先に避難行動をとった。
 自宅は、1F天井まで波が渦巻き惨憺たる状況だったが、ガタイが頑丈だったので、流れ込んだ異物や家具・床板などもはがして、住める状態までこぎつけた。

 仮設住宅に居住している間に、長年の研究課題としていた、本論をまとめたのだから畏敬すべきことである。亘理郡山元町を中心として福島県北部の海岸一帯(相馬郡))にかけて、おびただしい古代の製鉄炉(タタラ炉)が出土している。それぞれには遺跡の名称を付した標識が建ててあるが、それだけでは不十分であり、著者は古代の系統的な製鉄遺跡として調査すべきであると言うのである。

 亘理郡一帯は、出雲(山陰地域)と並び、我が国屈指の産鉄地帯であった可能性が高い。
 古代では、金よりも鉄の方が価値のある金属だったと考えられるのである。農具・武器と有用性がはるかに高い。金の用途は仏像の金箔くらいではなかったのだろうか。

 鉄の生産者は莫大な富を得て強大な権力を握った。亘理では今やすっかり忘れ去られている。山陰ではヤスキハガネの名称で今も存在しているが、ここ亘理では遺跡が出るのみである。

 中世、11世紀中頃に亘理権太夫藤原常清が源氏を向こうに回して大活躍する。その息子である藤原経清が戦乱を生き残り平泉文化を拓く。その力の源泉が亘理郡の鉄ではなかったのかと推論している。

 山元町には「大平」・「小平」という地名がある。これは「タタラ」が訛った語であると聞いたことを回想している。
 山元町では、復興事業として常磐高速道の建設が急ピッチで進み、常磐線も内陸側にずれて新設されることになるので、新たな遺跡発掘が期待される。全国から発掘の専門家が集まってきている。
Commented by schmidt at 2012-09-10 18:04 x
>仮設住宅に居住している間に、長年の研究課題としていた、本論をまとめた

 本当に頭が下がります。偉い人は市井に住むんです。亘理はかみさんの実家があります。古代の物語から一気通貫で(ここが大事)地域を理解する機会があってもいいですね。
Commented by watari41 at 2012-09-11 10:17 x
 奥様のご実家があるとは初耳です。
 恥ずかしながら、町内で歴史講演を頼まれたりすることもあるんです。
 先日の仙台ジャズフェスでは、schmidtさん若々しいクラリネットの演奏で、たいしたものだと思いました。
Commented by 武水しぎの at 2012-11-03 19:20 x
興味深い本のご紹介ありがとうございます。頒布しておられるのであれば、購入させていただきたいのですが、どうさせていただいたらよろしいでしょうか?
(わが町にも古代製鉄遺跡がありまして)
Commented by watari41 at 2012-11-04 10:42
武水さん、先日地元の新聞に彼の顔写真入りでこの著作が大々的に取り上げられたのです。そしたら、ほしいという依頼が殺到して、たちまちになくなってしまい、再度の印刷には大金がかかると頭を抱えてました。コピーをするとか処置を考えてみて再度ご連絡いたしましょう。
Commented by 三浦寛也 at 2014-05-27 20:48 x
普段は海外におりますが、実家が山元町にあり、地元の遺跡群にについて調べていたら、このページに行き当たりました。私もこのご本をぜひ読ませて頂きたいと思っていますが、コピーなど、ございますでしょうか?
Commented by watari at 2014-05-27 22:56 x
著者の菊池氏にも残部がないのだろうとおもいます。
住所がわかればわたしの持参しているものを送っても結構です。
菊地氏に直接連絡するのであれば、電話されたらいかがでしょうか37-1069です。
Commented by 三浦寛也 at 2014-05-27 23:02 x
早速のお返事恐縮です。連絡を取ってみることにします。たいへんありがとうございました。これからも、ブログを楽しみに拝読いたします。
Commented by watari41 at 2014-06-05 21:29
ご本人の先生は、日中は大変にお忙しく不在がちで、留守電も多いということでご迷惑をおかけしているかもしれません。
by watari41 | 2012-09-07 11:35 | Comments(8)