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余日録


by watari41

プロメティウスの罠

 標題は朝日新聞が福島原発事故を取材した特集連載記事である。私は購読していないので、それをまとめた単行本を読んだ。
 原発事故は、これまでも散々に言われてきたが、我々に公開されていなかった情報が極めて多い。事実はこれまでも綱渡りみたいな運転をやってきていたことがわかる。使用済み核燃料の処理も高速増殖炉「もんじゅ」に期待をかけて膨大な資金を使っているが、結果を出していない。夢のような技術で、欧米では撤退している。理論核物理学では最先端をゆく日本であるが、膨大なエネルギーを生み出す核の制御には、現代科学をもってしても不可能な感じがしてならない。青森県で進められている核燃料廃棄物のガラス固形化にも何度か失敗している。

 核融合という話も世紀には話題だった。長期計画だと今頃は実証炉の段階だと思うが、その後何らの話も聞いたことがない。現代技術は前かなり進歩したとはいえ、まだまだそんなことをやれる実力はないのだろう。 在職中に核融合のJT60(日本のトカマク炉)なる言葉を何ども聞いたことを回想している。その実験品の末端を手がけたこともあった。

 我々が知っている一般的な事故というのは、それを契機として技術改良を加えて、より良いものにしてゆくというストーリーなのだが、原発事故はそれら常識的考えを遥かに凌駕してしまうものである。何よりも事故の真相究明が行えない。現場に立ち入ることができないからである。

 事故調査委員会がいくつもできたが、明確な結論には至っていない。人災だと言い切るのがせい一杯なのである。

 8月15日に「終戦」というNHK特集TVを見たが、信じがたいようなことだった。ソ連の参戦情報をかなり前の段階で陸軍が掴んでいながら、公表されずスターリンに和平仲介を頼むということに賛成しているのだから、戦死者からみたら、虐殺されたと同じようなことだ。終戦直近3ケ月間の死者60万人にも及ぶ。近衛元首相はソ連への特使に予定されていたのだからピエロみたいなものだ。和平派と見られていた岩手県の米内海相も、最後には通俗的な考えに支配されて終わってしまう。

 阿南陸軍大臣は終戦日に自決する覚悟があるんだから、何でソ連は駄目だと言わなかったのだろうか。これは現代だからこそ言えることで、当時の陸軍組織では例え死を覚悟しても言えなかったのだろう。
 本音は別にして、最後まで本土決戦を唱えていたのである。番組を見ていて原発事故経緯と重なることが多く複雑な思いを持った。

 原発の再稼働をヒヤヒヤしながら見ている。発電量の50%を原発にしてしまった関西電力には選択肢がなかったのだろうが、戦争に突っ込む陸軍みたいなものだ。十万年に一度の活断層が直下にあるらしいが、その確率から外れることを願うばかりである。
Commented by schmidt at 2012-08-20 16:57 x
 使用済み核燃料の問題も。アメリカでは30万年もの間、地下貯蔵する計画があるんだそうですね。日本も同様。人間のおごりの極みです。
Commented by watari41 at 2012-08-20 17:29 x
 半永久的地下保存しか手はないんですね。日本には残念ながらそんな場所がないんですね。今日の朝刊、心の半減期、衝撃的な記事でした。schmidtさんコメントをありがとうございます。
by watari41 | 2012-08-17 20:52 | Comments(2)