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余日録


by watari41

希な事故

 今次、大震災で私が目にしたことや耳にしたことは、全体からみると、ほんの一部にしかすぎない。
 放送や新聞で知ることが多い。NHK震災特集の地域版に宮城県名取市閖上浜の被災を取り上げたものがあった。津波によって逃げ遅れた人々が多数死亡する悲劇があった。西に向かう道路の狭隘さが大きな原因であったのだが、津波到達には十分な時間があったにもかかわらず、住民の逃げるのが遅くなったのは、防災無線放送が全く機能しなかったことも大きな原因の一つであるという。

 防災無線とは、この辺りの田舎町ではどこにでもある。半径300m程度をカバーできる強力なスピーカーが町内の各所に設置してある。そのアナウンスは役場で行い、無線によって各スピーカーに放送を飛ばしている。震災当日も名取市役所では、職員が必死でマイクにしゃべり続けていた。しかしスピーカーは作動せず
閖上地区で放送は全く聞こえなかったのだという。その原因は市役所に設置してある無線送信器が故障したことによるものだと判明した。

 無線機器の製造メーカーは故障の追及に当たった。機器のなかに一部が黒焦げになりショートして、溶けてしまい何かわからない物質が付着していることが判明した。

 やがてメーカーからの事故報告がもたらされた。溶けた物質の分析から亜鉛と銅が検出された。真鍮である。報告書はこう結論ずけている。
 原因は小さな真鍮ビスが、地震の揺れで外部から飛び込んできて、回路をショートさせたものであるということだ。送信機の外缶側面は放熱のためヒダ状にわずかに口を開けているので、そこからはいったのだというのである。どんなに低い確率であったのか驚いた。オールドエンジニアの私は納得である。

 その昔、白黒テレビがまだ自分で組み立てられる時代のことだった。雑誌にこんな珍しい故障もありましたという記事だ。映らなくなったテレビを調べていたがどうしても原因がわからない。元に戻そうとしたらポトリを小さなハンダの塊が落ちてきたそうで一件落着ということを回想している。

 名取市の事故も函体の上に小さなビスが落ちていたとすれば説明がつく。
 無線放送の悲劇として、全国ニュースにもなっているのが南三陸町の放送を担当していた女性職員が、最後までマイクをはなさず、3Fの役場全体が津波に巻き込まれたことだった。
 希な事故も起こり得ることを想定しておかなくてはならない。
 
Commented by ようこ at 2012-02-06 21:18 x
>震災当日も名取市役所では、職員が必死でマイクにしゃべり続けていた。しかしスピーカーは作動せず
閖上地区で放送は全く聞こえなかったのだという。その原因は市役所に設置してある無線送信器が故障したことによるものだと判明した。

まあ、いろいろ不運なことが重なるものですね。

他の町では、防災無線が届かない地域があったようです。また、スピーカーが何箇所にも設置してあるのに、、反響しあってなにを言っているか聞えない地域もあったとか・・。
本当にいろいろなことが起こったものです・・・・。
大震災で怪我もせず、無事だったことが不思議なぐらいです。感謝。

Commented by watari41 at 2012-02-08 11:13 x
音声周波数やスピーカー形状を変えて聞きやすくるとか、震災後種々の試みがなされております。先日もわが町の海岸で500mも音声が届くように改良した機器の実験が行われておりました。
防災無線放送は、ご指摘のようにこれまで、ものすごく評判が悪かったのです。改善の努力が全くありませんでした。
人命事故がないと、道路に新たな信号機が設置されないと似たようなことなのですね。ようこさんコメントをありがとうございます。
by watari41 | 2012-01-31 14:06 | Comments(2)